
ツバメ、そして総合的な探究の時間
毎年この時期になると、建物や民家の軒下にツバメの巣を見かけるようになります。せっせと巣づくりに励むツバメたちの姿を見たり、賑やかな鳴き声を聞くのは頼もしいものです。そして、勝手にですが、同じ子育て仲間として応援したい気持ちになります(笑)
我が家の軒下にも、昨年、初めてツバメが巣作りにやってきました。かわいらしいヒナが5羽、成長し無事に巣立って行きました。毎日見守っていただけに、巣立ち後の空っぽの巣を見ると寂しい気持ちになっていたものです。
それから1年が経ち、なんと先日、またツバメがやってきて巣を作り始めたのです。もしかして去年と同じツバメなのかなと期待して調べてみると、夫婦で同じ場所に戻ってくるツバメは15%くらいとの報告がありました。
さて、昨年からツバメの巣をじっくり観察している我が家の子どもたちですが、今年はその巣を見てある疑問を持ったようです。
「ツバメの巣ってどうやって作られているの?どうして固まってくっつくの?」
いきなりそんなことを聞かれても、私にわかるはずがありません。
少し調べてみたところ、偶然にも、ツバメの巣が接着する理由を研究した高校生3人が「日本生態学会大会 高校生ポスター部門」で最優秀賞を受賞した、という記事を見つけました。彼らは高校の「総合的な探究の時間」という授業で、1年かけて研究に取り組んだそうです。人工的に巣を作ったりして分析を行った結果、「ツバメの巣の強度は唾液が重要な役割を果たしている」との結論に至ったようです。
「総合的な探究の時間」というのは、文部科学省が2022年度から新たに実施することを決め、社会で求められる力、すなわち「生きる力」の育成をはかるための科目。課題発見から解決までの能力や自分自身の理解、探究学習を通じて新たな価値の創造と未来への意識を持たせるなど、「総合的な探究の時間」で育成された能力を用いて教科学習に生かすことが目的とされています。さらに社会に出た際に、探究学習で学んだ思考プロセスなどを活用することなども目的としています。
実際、最優秀賞を受賞した3人は、「授業での研究は終わったが、謎のままでは終われない」と、今後は大学の研究機関の協力を得て、ツバメの唾液の成分の解明に取り組もうと意欲的に研究をすすめているようです。まさに「総合的な探究」が目指している本来の姿だと感心しました。
「総合的な探究」は多くの高校が導入の仕方に悩んでいたり、また、一方では進路実績を上げるために利用されてしまっているのが実情です。しかし、今回のように、生徒がいかに考え、生徒自身が学びを深め広げていけるかが重要ですよね。好奇心をもっていれば身近な題材で研究はだれにでもできます。今後、総合的な探究の授業を通して、このような事例が増えていくことを願うばかりです。
最後になりますが、我が家の子どもたちがツバメの巣をじっくり観察しているのには理由があります。実は、日本野鳥の会が行っている「ツバメの子育て状況調査」に、昨年から調査員として協力しているからなのです。みなさん、近年ツバメが減少傾向にあることをご存じでしたか?日本野鳥の会では、ツバメを見守ってくれる人を増やし、人とツバメが共存できる社会を目指ざすために、この調査を全国的に行っています。インターネットから簡単に登録できますし、みなさんも興味がありましたらぜひ日本野鳥の会のサイトを訪れてみてください。そのような身近なところからも、新たな探究心が生まれるかもしれません。
日本野鳥の会 ツバメの子育て状況調査