
災害と研究
先日、ザッピングをしていたところ、「災害から命を守る」というテーマで意見を交換し合う討論番組に目が留まりました。そういえば、朝の情報番組でも災害から逃げ込める街づくりに取り組む企業を紹介していたことを思い出しました。梅雨入りした時期柄、大規模災害と防災への関心が高まっているのだと思います。
東北の沿岸地域出身の私は、幼いころから幾度となく大きな地震と津波への警戒を経験してきました。不気味な地鳴りと、地面が揺れる怖さは突然襲ってくるものだと思っていましたし、津波がきたら祖父母から言い伝えれられた場所へ避難するのが当然だと思っていました。しかし、1995年の阪神淡路大震災以降、地震への備えと意識が大きく変わってきました。緊急地震速報とハザードマップの活用、そして防災意識が身近になったからです。大きな揺れの前には心構えや火の元の確認ができるようになり、昔からの言い伝えではなく、浸水予想地域がデータで確認できるようになり、適切な避難場所を知る事ができました。
地震だけではありません。台風の進路予測はより詳細になり、大雨による河川の水量変化予測や土砂災害の危険予測も正確になりました。それによって避難情報も以前より早く周知されるようになりました。最近では、線状降水帯の予測精度が向上したニュースが話題になりましたね。
「なんて便利になったのだろう!日本の技術ってすごいな~!」
と、呑気に技術の発展の恩恵にあずかる私ですが、この便利さは誰が生み出したものなのかと疑問が浮かびました。
わからないときは調べることが大事です。「地震 技術 研究」とインターネットで検索すると、大学の地震研究所のホームページが数多く並びます。いくつか覗いてみると、その専門性は多岐にわたり、火山と地震の関連性、海域地震観測調査、活断層、地震予知、地殻変動、観測データ収集、津波、地震歴史研究・・・と、様々な専門分野で研究が行われていることがわかりました。個人的にとても驚いたことは、震度の予測技術に人工知能(AI)を適用する研究が進められているということです。また、ハザードマップの作成には、地理学や都市工学が、河川の洪水対策には環境水理学、河川工学の分野の研究が役立てられていることを知りました。
自然災害が多い日本は、災害発生の仕組みや防災に関する研究や開発が熱心に進められています。その研究の基盤を担っているのが、大学の研究室です。そこでは、過去の大きな被害や目の前の困難な問題、この先人々の生活に影響があるかもしれない懸念に対して、学問的な視点を元に観測データや調査実験を行う研究者(大学生)が日々奮闘しています。私達の便利で安全な生活を支えているのは、こういった研究者や学生の研究の賜物なのです。
高校生のみなさんは、「大学にはいったら〇〇の勉強をしたいな」と漠然と考えると思いますが、その際はぜひもう一歩踏み込んで、「この大学のあの研究室はどんな研究をしているのかな」と興味を持って調べてみることをお勧めします。どんな専門分野の研究が行われ、それがどうやって社会に還元されているのか知る事で、自分の進路と大学のマッチングがうまくできると思います。
夏は大学のオープンキャンパスの時期ですね。今年はオンラインではなく、実際にキャンパスを見学できる大学も増えると思います。在籍する教授の模擬授業も意欲的に受講しても良いと思います。進路を考える際には「自分は何を研究したいのか」ということについてじっくりと考えてみましょう。