
ファッションから見る時代の変遷
先日、英国にてエリザベス女王の即位70周年を祝した「プラチナ・ジュビリー」が盛大に行われました。女王は英国史上最も即位期間が長いことで有名ですが、次いで話題にのぼるのはその華麗なロイヤル・ファッションですね。
彼女のファッションはメッセージが込められていることで有名です。プラチナ・ジュビリーの最終日はコートワンピースとハットをグリーンで統一していましたが、これは2021年に逝去したエリザベス女王の夫のフィリップ殿下の公式カラーであるエディンバラ・グリーンであり、殿下への思慕を表現したものではないかと話題になりました。
また、ファッションを外交の一部とも考えており、諸外国を訪問する際はその国の伝統や感性にちなんだ色の洋服をお召しになるそうです。女王のファッションの遍歴は、まさに英国王室の歩んできた歴史や時代そのものと言えるのかもしれませんね。
しばしば、ファッションは時代を映す鏡であると表現されます。日本を一例とすると、戦後の華麗な海外ファッションの導入、アメリカ文化や自由・反体制主義などからくる若者文化の隆盛、バブル期におけるDCブランドブーム、低価格ファストファッションの台頭など、確かに当時の社会情勢や人々の思想が色濃く反映されているようです。
現在は、大量生産・消費の問題意識に端を発するサステナブルファッションが流行していますね(詳しくは、2022/07/06の記事「サステナブルファッションについて考える」で取り上げていますので是非ご覧ください)。人々が服を選ぶ基準や「いい」とされる服が時代の価値観によって異なるのは非常に興味深いと思います。
ところで、以前はあまり聞きませんでしたが、最近は洋服の選び方の新基準として「パーソナルカラー診断、骨格分析」というものが注目されていますね。
パーソナルカラーとは、NPO法人日本パーソナルカラー協会(https://www.p-color.jp/about/)によれば「第三者から見て似合う色のこと。その人の肌、瞳、唇などの色に調和する色(似合う色のグループ)のこと」であり、骨格分析とは、一般社団法人ICBI骨格診断アナリスト協会(https://fashion.or.jp/kokkaku/)によれば「持って生まれた身体の質感やラインの特徴から、自分自身の体型を最もきれいに見せるデザインと素材を知ることができる(もの)」とのことです。
また、株式会社ハー・ストーリィ主催「女性視点マーケティングHERSTORY※2021年12月調べ」(https://herstory.co.jp/databank/research20220110-5)によれば、女性がファッション関連商品・サービスを購入する上で最も重要視しているのは「自分の体形に合うか」、次いで「自己充実できる、私らしいと思えるものか」という点であり、その判断基準の一つが上記のパーソナルカラー診断、骨格分析とのことでした。
流行に左右されない、真に自分に似合う洋服を選びたいという考えは、これまでの高級ブランドブームや大量生産消費時代を経た、かつSNSで容易に自己発信が可能である現代ならではのものなのかもしれません。
一方で、自分の感情から来る「好き」よりも肌色や骨格を優先して服を選ぶというのは、世間が良しとする正解を従順に求めている行為のようにも思えます。「私らしいと思えるものを選びたい」と思いながらも、結果的には「第三者から見て似合う」色や形を選んでいるのです。そこには「正解し続けなければならない」「失敗したくない」「時間や労力をかけずに最適解を導き出したい」という現代人の深層心理や価値観が見え隠れしているようにも思われますが、あなたはどのように考えますか?
ファッション、調べ始めると奥が深く沼にはまっていくようです。次回のブログもどうぞお楽しみに!