文体に目配りを!!
東です。日頃、添削をしていると「文体を統一する」という基本的なことができていない答案を、わりと見かけます。恐らく、勢いに任せて書くことで、うっかりやってしまう単純なミスでしょう。冷静に読み直せばすぐに気づく間違いでもあります。しかし、以下のような厳しい評価を受けることにもなりかねないので気をつけたいものです。
・言語感覚の鈍い人物
・文章の読み返しのできない人物
これと同様、文字を丁寧に読みやすく書くことも大切ですね。いずれも基本中の基本、このようなことで、評価が下がるのは大変勿体ないことです。念頭に置き、取り組むようにしましょう。
さて、文体には常体と敬体がありますので、いずれかに「統一」するということです。
・常体(だ・である)→事実や意見を客観的に述べるもの
例:レポート、報告書、論文
・敬体(です・ます)→相手に話しかけるような気持ちで書くもの
例:手紙、挨拶文、お知らせ
上記のように示されたものがありますが、あなたはどちらを選ばれているでしょうか?小学校、中学校では、敬体が主であったように思われます。高校では「目的や場に応じて言葉使いや文体など表現を工夫して話したり書いたりすること」となるようです。そして、自ら文体を選択し、どちらかに統一していくことになってきました。
「統一」と考えた場合に、常体へは比較的難しくないのですが、敬体へは単純にはいかないようです。敬体の文章に関して、ある校閲の本に書かれていたものを以下のようにまとめてみました。
「嬉しい」→「嬉しいです」
これは話し言葉なら何の違和感もないですが、書き言葉ではちょっと稚拙な感じが否めません。
「嬉しい」→「嬉しいのです」
どういうわけか違和感がなくなります。ですから「の」を入れるのも一案です。しかしニュアンスが微妙に変わってきます。「嬉しいです」は素直な気持ちの表現ですが、「嬉しいのです」は説明の側面が強くなります。単なる感想としてはそぐわない場合が少なくありません。
「嬉しい」→「悲しくありません」
与える印象がかなり変わってしまいますね。反対語を否定する形は「多い」を「少なくありません」、「難しい」を「易しくありません」などは有効ですが、全てに応用とはいかないようです。
「嬉しい」→「嬉しく思いました」
これは正式な表現ではあります。しかし、どこか一歩離れたような語感も残ります。「嬉しかったです」ほどには、気持ちがストレートに伝わらないような気がします。そこで考えついたのが、次の表現です。「久しぶりにお会いできて嬉しい一日となりました」ではどうでしょう。
このように、文脈によって形容詞の丁寧な形はいろいろ表現を工夫する必要があります。
どうでしょう?敬体に統一するのは難しいと思われたでしょうか?しかし、敬体で書かれた文章には、丁寧で柔らかい印象という良さがあります。そのような表現が適切な場合もあります。どのようなケースにも対応できるよう、常体、敬体を使い分けることが大切かと思います。
いずれにしても「文体の統一」がまず基本にあります。そこから一歩踏み込んで、違和感のない適切な表現の工夫も必要になってきますね。
皆さんも文章表現の工夫を楽しみながら、敬体にも慣れてみましょう!