説得力をどう評価するか
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代表の神崎です。
マニアックな記事を書く担当と化しています。。。
小論文の世界では「説得力のある根拠(理由説明)」が求められます。この「説得力」とは何か、いい機会なので、言語化してみようと思います。
以下、興味のある方だけお読みください。読みにくかったり、抽象度が高かったりしますが、ご容赦ください。
おそらくその基準を段階ごとに分けていくと、こんな感じだと思っています。
①論理の誤謬や飛躍がないこと
②確からしさがあること
③意見・主張を訴える重要性・問題性が示せていること
①について
根拠を示す時は、その説明が反論を受けないように緻密に論理構築をしていく必要があります。基本的には条件命題(Aならば必ずBである。Bならば必ずCである。…Yならば必ずZである。)を連鎖させて論理を組み立てます。
「ならば」を挟んだ要素どうしの関係が「そうだよね」と納得されればよいのですが、ここに誤謬があると反論の余地が残ります。そうなると構築した論理が成立しなくなるわけで、指摘を受けた部分以後の論理も成り立たなくなります(背理法)。説得力を欠く原因の多くはここにあります。例えば、前提となる論点やキーワード等の定義がいつの間にかすり替わる(もしくは明確に定義しないまま論理を展開する)誤謬がありますが、多くの場合は違和感を抱く原因になります。
また、論理の飛躍も問題になります。両者の関係が飛躍していると読み手が論理の妥当性を評価することができませんので、構築した論理全体の信頼性が低下する原因になります。例えば「アクティブラーニングをやるといじめや自殺が増える」と単に示されてもなぜそうなるのかが分からないし、読み手はそのメカニズムを検証しようがありません。こうした論理を自己批判なく論じる書き手のあり方に疑問を抱かざるを得ません。
なお、上記の要素A、B、C…Y、Zは事実で示し、なるべく主観性を帯びるものを含めないようにします。主観性を帯びる要素を含めると、その部分について読み手が「そうだよね」と納得するケースもあれば「そうは思えない」と反論する場合も起こります。後者の場合は論理の誤謬と捉えられ、上記のように背理法で論理不成立と判断されてしまいます。
だから、論理を上手に組み立てたり、論理の揺らぎを確認したりするためには、まず論理式・対偶・選言・連言・分解・結合・三段論法等、形式論理の基本がわかること、論理の誤謬のパターンを知っておくこと、論理の飛躍を確認するために自分の根拠に対して「なぜ?」と何度も問いかけて飛躍を穴埋めすることが有用です。
論理の誤謬についてはウィキペディア先生が非常に簡潔に教えてくださいますので、いつも参考にしています。
②について
上記①で仮説のまま論理を構築するケースをよく見かけます。しかし、その論理自体の妥当性を何らかの方法で示さないと、「その論理は本当に成立するのか」と反論を受けることになります。だから、その論理を構築した本人が「確か」であることを文章中で示さなければなりません。
しかしながら、論理関係が「確か」かどうかは科学的理論ですら証明できないのですから、ましてや小論文のような文章ではかなり困難です。これが「小論文には解答がない」と言われる所以です。結局のところ、どんな主張と根拠を示しても「それ、確実だとは言えませんよね」という反論の余地が残ってしまうからです。したがって「確か『らしい』」という段階で根拠提示せざるを得ないわけです。
「確からしさ」を示すためには、構築した根拠が確実性高く再現できることを裏付けることが必要です。その材料になるのが「事実」です。仮説を立てるにしても、事実に依拠しない単なる空想では証明しようがなく、「確からしさ」すら示せません。
理想としては、事実として論理の確かさを証明する信頼性のあるデータ(エビデンス)を示せればよいのですが、これが厄介です。そのデータまでたどり着けない、データを取っても標本数が少ない、そんなことやってたら時間がなくて答案がかけない、といった感じでしょうか。志望理由書のような時間がかけられる課題ならまだわかるのですが、入試小論文の場合は出題者側からの資料提示がない限り難しいでしょう。
社会課題や専門的な視点が必要なテーマが課された場合、事実は「周知の」のものである必要があります。また、先人が築き上げた科学的理論も、第三者によって科学的検証を終えていることから、一応事実に含むことにします。ここで特殊事例を用いると「それは特殊な事例に基づいた論理だから、多くの場合は成立しない」という反論を受けてしまいます。
だから、説得力のある小論文を書くには多くの「周知の事実」をいかに手元に置いておく必要があるわけです。新聞やニュースを読もう、読書しよう、高校の教科活動を大切にしよう、探究活動を進めようというのは「周知の事実」を増やす活動になります。ただ、それが良質かどうかは吟味する必要があるとは思います。
他方、設問が自己に関するテーマのときがあります。そのさいは自己の体験を「事実」として用います。ただし、体験は特殊事例であることが多いので、読み手が納得しない場合があります。その対策のために、体験を経験化(抽象化)して一般性・普遍性があるものとして示すと有効なときがあります。また、他者の理論を引用して主張の妥当性を裏付けるという方法も考えられます。
③について
自分が何かしらの主張をするということは、その主張をすることが自分にとって重要だ、問題があると感じているわけです。しかし、自己の主張が必ずしも他者に受け入れられるわけではなく、真っ向から対立したり、批判を受けたりすることは必然です。
そうした中で、対立する他者であっても、自己の主張が合理性のあるものだと伝える必要があります。そのためには様々な主張が考えられる中で、なぜ自分の主張に有利性があるのか(わざわざ他者に訴えなければならないのか)を示します。言い方を変えれば、自分の主張は他の主張と比べて採用すべき優先順位が高いことを示すということです。
この有利性を際立たせるために、例えば譲歩構文を活用して対立する主張に反論を加えて説得力を落としたり、相対する主張を対比的に示して弁証法で新たな主張を導くストーリーを示して「相対する立場を両方成立できる提案ですよね」とメリットを示したりします。
上記①〜③を十分に満たし、異なる方向性の答案が複数出てきた場合は、書き手の価値観や立場による対立となるので、結局は優劣が付けられない状況になります。そうしたら、両者引き分けですね。
ただ、上記①〜③を満たすのはかなりハイレベルであることは確かで、私がいままで小論文の採点をしてきた中では、この状況で甲乙つけ難かったことはほぼありません。
上記①〜③を十分に満たし、異なる方向性の答案が複数出てきた場合は、書き手の価値観や立場による対立となるので、結局は優劣が付けられない状況になります。そうしたら、両者引き分けですね。
ただ、上記①〜③を満たすのはかなりハイレベルであることは確かで、私がいままで小論文の採点をしてきた中では、この状況で甲乙つけ難かったことはほぼありません。
…勢いで言語化してみましたが、私の頭の中で小論文を評価するときはこんな感じでやっています。